「バカの壁」という本(1)
2009年 06月 20日
数年前にベストセラーになった養老孟司氏の「バカの壁」という新書があります。
当時はまだ自分の頭で考えるという営為に自覚的ではなかったため、自分が知覚したことを、自分の頭で考えるということが、自分の世界を生じさせているという事実についても十分な自覚がないまま、曖昧な世界にまどろんでいるという状況でした。
「バカの壁」は3回くらい読み返した記憶がありますが、1回目は全く理解できず、「バカの壁」の攻略本を買って読んだくらいです。
今となっては攻略本がなぜ出版されたのか分かりませんが、おそらく「バカの壁」が読解できないという人がたくさんいたため、その読者層をターゲットとして出版されたのでしょう。
要するに、「バカの壁」が理解されにくい内容であったということになります。
「バカの壁」が難解であると思った理由は、養老孟司氏の論理が、私たちが自然と思っている見方と反対になっていることから来る違和感です。
情報は変化して、ヒトは変化しないという見方が支配的であったときに、ヒトは変化するが、情報は変化しないという逆説を提示されてしまい戸惑った読者も多かったことと思います。
あらためて考えてみれば、氏の見解が論理的にも整合した自然な結論であると深く納得できるのですが。
そしてもうひとつの違和感は、氏の使用する言葉の意味が多義的であるということです。
通常、私たちは分かったつもりになっているため、日常使っている言葉の意味を限定して使用していることにさえ自覚的ではないようです。
つまり、自分の生きている世界で使用している言葉の意味がすべてであると思い込んでいるところがあるといえます。
このため「バカの壁」で氏が使用する言葉の意味が、私が日常で使用している言葉の意味と少しずれている(文脈が違っている)ということに気付くまでしばらく時間がかかり、居心地の悪さと読解の困難さを感じていました。
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