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先の見えない時代にあって、自分の求める生活や価値を明確にしておくことは大切なことです。自分と環境との関係性を考え、欲望をほどよく制御するための心と体の癒しのメッセージです。


by 逍遥
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Aloha? or Business?(全編)

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ハワイには、ローカルタイムが流れているといわれることがあります。

急がず、ゆっくり、ゆったり生活することが、ハワイアンタイムの過ごし方とされているようです。

仕事の納期は、発注した側だけではなく、受注した側さえも、期日はあってないものと割り切っていると聞いたことがあります。

タイム・イズ・マネーが国是のアメリカ合衆国にあって、このようなローカルタイムが通用しているのは本当に不思議なくらいです。

楽園ハワイと呼ばれるのは、涼しげな木陰の風とハワイアンタイムが流れているからかも知れませんね。

ところで、アラモアナ地区近くのアラワイ・ヨット・ハーバーに、チャートハウスと呼ばれるライブハウスとレストランを兼ねた店があります。

チャートハウスは、夕方の早い時間からアルコール目当てのローカルや観光客が集まりいつもにぎわっています。

日本は、まだまだアルコールとタバコは自由に楽しめますが、ハワイでは厳しいルールが適用されているため、飲酒、喫煙が許される場所は限られています。

これはハワイ限定のルールというよりは、アメリカ合衆国全体のポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)と言えるものかもしれません。

つまり、アメリカ合衆国における禁酒・禁煙のルールは、建国の精神であるプロテスタンティズムの教義の「世俗内禁欲」に由来するものであるからです。

また、アメリカ合衆国は、自らの正義は自らが規定する社会であって、自分が正義であらねばならないことを常に強迫されている二項対立型の社会と言えます。

日本は善悪や正邪の区分が曖昧ですが、それとは全く異質な社会と言えそうです。

したがって、アメリカ合衆国でポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)に異議申し立てするということは、直ちに二項対立の邪悪に区分されることになります。

アメリカ合衆国の禁酒と禁煙のルールは、アメリカ人にとって正義であって、アメリカン・スピリッツの体現と言えるのかもしれません。

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では、まずハワイのタバコ事情ですが、レストランなどの店内はいうまでもなく、チェックインしたホテルの部屋の中でも禁煙とされています。

日本でも健康増進法の施行以来同じような状況になっていますが、日米の喫煙に関する法律の規制は、ここ15年間で一気に整備されたといえそうです。

そして、次にアルコールですが、禁酒の歴史は禁煙よりも古く、ハワイのビーチなどではアルコールの摂取が一切法律で禁止されています。

週末のローカルの楽しみにビーチや公園でのバーべキューパーティがありますが、ローカルがアルコールを摂取せずに盛り上がっている様は、花見酒文化のある日本人からすると不思議に思えることがあります。

また、レストランなどでは食前酒を飲む習慣はありますが、英国のバーやイタリアのバールのような飲酒を目的として営業している店は少ないようです。

ダウンタウンのライブハウスなどは数少ない飲酒目的の店といえそうですが、治安があまりよくないため、観光客が気軽に足を運べる場所ではありません。

このため、ワイキキやアラモアナ付近のライブハウスやスポーツバーなどが、観光客が比較的安全に飲酒を楽しめる店となっています。

アラモアナ近くのアラワイ・ヨット・ハーバーにあるチャートハウスも、安心して飲酒ができる店のひとつで、夕方の早い時間から夜遅くまでローカルや観光客でにぎわっています。

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ところで、ハワイでは、いまでも体型がヘビー級という人を多く見かけることがあります。

ただ、従来と比べれば健康志向は高まってきているようで、ダイエットによるダウンサイジングがハワイのトレンドになって来ているようです。

レストランでは、アメリカンサイズの超大盛り料理を得意げに出す店が多かったのですが、こちらも適量が主流になって来ているように思われます。

ワイキキ滞在中によく利用するL&Lドライブ・インでは、大きなチキンカツが二枚乗ったビックなプレートランチがレギュラーサイズと呼ばれています。

大盛りのライスにチキンカツが二枚乗ったビックサイズがレギュラーと呼ばれのは、まさに食文化の違いとしか言いようがありません。

ただ昨今では、ビックサイズのなレギュラーよりも、チキンカツ一枚だけが乗ったミニサイズを注文するローカルが増えていると聞きます。

これは一例にすぎませんが、ダイエットによるダウンサイジングは、ハワイの人に徐々に浸透してきていると言えるのかもしれません。

また、ダウンサイジングのトレンドとしては、ダイエットのよるもののほかエクササイズとしてのジョギングによるものがあります。

日本でも同じですが、ウオークマンを聴きながらファショナブルでカラフルなウエアを纏ったランナーが街中を走って行く風景に人気が集まっているように思われます。

ワイキキを朝早く散歩していると、ファショナブルでカラフルなウエアのランナーが街を駆け抜けて行く光景に出くわすことがあります。

朝日が昇るダイヤモンドヘッドを背にしてカピオラニ公園の中を走って行く様は、まさにハワイの絵になる風景のひとつではないでしょうか。

ハワイのダウンサイジングは、ダイエットとジョングの車の両輪によって駆動し始めていると言えそうです。

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ところで、ジョギングとは「走る」という行為行動のことを指します。

そして、ハワイでは、一定の条件が整っていないと、この「走る」という行為行動が周りのローカルから認知されない(不審がられる)暗黙のルールがあるようです。

その暗黙のルールとは、実に簡単なことですが、ジョギングをするときはジョギングウェアやジョギングシューズを身に着けて「走る」ということです。

実に当たり前なことですが、もし街の中をジョギングウェアではなく、スーツ姿の人が走っている光景を見かけたとしたら、何か事件でもあったのかと不審に思うのが自然な反応ではないでしょうか。

たとえスーツ姿ではなくとも、普段着のまま「走っている」人を見かけたとしたら、おそらく周囲の人は日常ではない非日常のことが起こったものと判断し、警戒感や緊張感が高まることになるのではないでしょうか。

そもそも人が「走る」という行為行動には、走る側の目的や意図とは一切関係なく、その光景を見かけた人の警戒心や緊張を高め、脳内アドレナリンを大量に分泌させる効果をがあるとされています。

ただ、このような人が街の中を「走る」という行為行動が、非日常として不審なものとされるのは、言うまでもなくハワイだけに限定されることではありません。

日本であっても、向こうからスーツ姿のサラリーマンが、全力疾走で、こちらに向かって走ってきたとしたら、一体何事が起こったのかと緊張感が高まるのは当然のことです。

したがって、ハワイに限らず、街中で「走る」という行為行動を正当化したいのであれば、走る側は自らが不審者(非日常)でないことを告知しなければならないことになります。

そして、告知のための道具(シグナル)が、ランナーが身に纏ったジョギングウェアとジョギングシューズということになります。

ジョギングウェアとジョギングシューズはファショナブルやカラフルでなくても構いませんが、「走る」という行為行動を非日常から日常へと反転させるシグナルになっているということです。

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繰り返しになりますが、日常の中で「走る」という行為行動が、非日常(不審)とされるのは、ハワイに限ったことではなく、他の国や地域でも同様ということでした。

ただ、ハワイが他の国々や地域と大きく違っているのは、「走る」という行為行動に限らず、急いだり(拙速性)、焦ったり(焦燥感)するしぐさや言動に対して、とてもネガティブな反応が返ってくるということです。

たとえば、ホテルのチャックアウトで時間に余裕がなく、こちらが急いでいるそぶりを少しでも見せれば、ホテルマンはすかさず焦燥感を察知して、落ち着けといわんばかりに、あえてゆったり、ゆっくりと「アロハ」と笑顔で答えることになります。

ハワイにあっては、相手を苛立たせたり、相手を急かせるようなしぐさや言動は、とてもネガティブな行為行動と見做されてしまうということになります

グローバリゼーションと資本主義が席捲する社会にあっては、タイム・イズ・マネーの合理主義と効率主義がしっかりと根付いたものになっています。

不思議なことに、ハワイではこれとは真逆な急がず、ゆっくり、ゆったりのハワイアンタイムが、タイム・イズ・マネーに対するカウンターカルチャかのように機能しています。

おそらく、多くのアメリカ人や日本人がハワイに憧れるのは、ハワイの気候風土のためだけではなく、ハワイアンタイムが流れる非合理かつ非効率な楽園風土に癒しを求めているからではないでしょうか。

先にも触れましたが、ハワイでは、今でも仕事の納期が事実上はっきりとしない商習慣(ローカルルール)が行われていると聞きます。

これは、ハワイの商慣習(ローカルルール)が、今でもハワイアンタイムを標準としているためであって、ハワイの人が怠惰で仕事をしないからではないと思われます。

そして、ハワイの人がハワイアンタイムを標準とするのは、おそらく急激な近代化(グローバル化と資本主義化)から自らの身を守る(自我を守る)ための防衛機制(反動形成)ではないかと思われます。

つまり、グローバル化と資本主義化から身を守る(自我を守る)ために抑圧した合理主義と効率主義が、それとは真逆な方向に出演したのが急がず、ゆっくり、ゆったりのハワイアンタイムではないかということです。

むろんハワイの人の自我だけが脆弱であったわけではなく、日本や他の国や地域の人も同様に、急激なグローバル化と資本主義化から自らの身(自我)を守らなければならない危機的な状況にあるのは同じことです。

一般論としては、現代社会では、グローバルスタンダードと横並びでないもの、突出したもの、劣ったものは、日常をかく乱するネガティブなものとして抑圧される傾向があるように思われます。

先ほどから言及している街の中を「走る」という行為行動も、一般には拙速性や焦燥感を煽る非日常で不審なしぐさや言動として区分されるため、平穏な日常や安定した自我をかく乱するネガティブなものとして抑圧(排除)の対象になってしまうということです。

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やっと、冒頭のヨット・ハーバーの話に戻ってくることができました。

私は、午後6時に、アラワイ・ヨット・ハーバーの正面にあるハワイプリンスホテルのロビーでガイドの方と待ち合わせをしていました。

待ち合わせまでに少し時間があることから、アラワイ・ヨット・ハーバーの埠頭まで足を伸ばして、夕暮れのヨット・ハーバーを写真に撮っていたところ、つい写真撮影に夢中になってしまい、気がつけば待ち合わせの午後6時少し前になっていました。

私は、少し焦り気味で待ち合わせ場所のハワイプリンスホテルまで走って帰ることにしました。

アラワイ・ヨット・ハーバーを小走りで横切っていくと、やがてチャートハウスというレストラン兼ライブハウスの前に出ます。

そして、チャートハウスの前をちょうど小走りで通過しようとしたときに、私に向かって「ビジネス?」と声をかけてくる男性がいました。

その男性の様子を伺うと、チャートハウスで夕刻の早い時間からアルコールを飲んでいたらしく、にやにやととてもご満悦な様子でした。

チャートハウスからは、すでにアルコールで盛り上がっている他の客の声も聞こえていました。

チャートハウスは、観光客だけではなくローカルにも人気があってて、日本の観光ガイドブックでもよく取り上げられています。

そして、レストランで利用されることも多いのですが、やはりチャートハウスのメインはアルコールと生演奏のライブではないでしょうか。

先にもふれたとおり、ハワイにおける禁煙に関する法律の整備が一気に進んだのは、ここ15年間程のことであったと思われます。

ハワイのホテルやレストランは全面禁煙となり、どうしてもタバコが吸いたければ、ホテルやレストランの外に置かれた灰皿(バケツ)で喫煙することになっています。

私が店の前を通り過ぎたときに声をかけてきた男性も、チャートハウスの外に置かれたた灰皿(バケツ)で、のんびりとタバコを吸っているところでした。

アルコールとタバコでご満悦した男性は、おせっかいにもその幸せを他の人にもおすそ分けしたくなったのか、少し焦り気味に駆けていく日本人観光客に向かって、笑いながら揶揄すかのように「ビジネス?」「ビジー?」と声をかけてきたのです。

「ん・・!!」

むろん、ハワイには急がず、ゆっくり、ゆったりのローカルタイムが流れているため、焦ることや急ぐことは、ネガティブな行為に区分されることは、先ほどから繰り返し言及しているところです。

また、街中を走るという行為行動が、焦燥感や拙速性を想起させるため、ハワイではマナー違反なしぐさや言動とされるということも了解しているつもりです。

しかしながら、いくらローカルタイムがハワイのスタンダードであったとしても、コンテクスト(文脈)が分からない他人に向かって「ビジネス?」「ビジー?」と揶揄するのは、果たしてハワイにおける適切なコミュニケーションルールといえるのでしょうか。

「郷に入れば郷に従う」は承知しているつもりですが、このときばかりはさすがにこの場面へのローカルルールの適用に疑問を持ちました。

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「ビジー?」や「ビジネス?」という言葉には、「落ち着け」「ゆっくりしろ」という、ちょっとした戒めの意味が込められていると思われます。

また、「困ったやつだ」「迷惑なやつだ」という相手を少しバカにしたような揶揄と嘲笑の意味も、同時に含まれていると思われます。

チャートハウスを通り過ぎたとき、私はジョギングウェアもジョギングシューズも装着していたわけではなく、普段着のままカメラを首からぶら下げていました。

繰り返しになりますが、確かに暗黙のルールでは、普段着のままで街中を「走る」という行為行動は、焦燥感や拙速性を煽る非日常(不審な)しぐさや言動に区分されてしまい、平穏な日常をかく乱するネガティブなものとして抑圧(排除)の対象になってしまうことでした。

しかしながら、普段着のままチャートハウスの前を駆け抜けてはいるものの、そのコンテクスト(文脈)が判然としない日本人観光客に向かって、「ビジー?」「ビジネス?」と揶揄をする言葉をわざわざ投げかけるのは、果たしてハワイにおける適切なコミュニケーションルールと言えるのでしょうか。

ハワイのような多文化共生社会では、各人は各人のコンテクスト(文脈)に従って生きることが基本になることは言うまでもなく、他者に自分のコンテクスト(文脈)を押し付けないこと、つまり相手のコンテクスト(文脈)を尊重するという姿勢がハワイにおける共生のための基本的ルールになるということです。

したがって、夕方の早い時間から飲酒してタバコまで吸っているお気楽?なローカルに、「ビジー?」「ビジネス?」と揶揄されたうえで、コンテクスト(文脈)を無視したローカルルールを押し付けられるというのは、正直いかがなものなのでしょうか。

このときばかりは、ハワイフリークを自称する私でさえも、さすがに閉口、辟易してしまいました。

もちろん、この男性は、ハワイ州の法律を守り飲酒と喫煙を楽しんでいるわけですから、このことについて異議申し立てするつもりは毛頭ありません。

多文化共生社会ではメタルールの法令が最も重要になるのは言うまでもありませんが、それ以上に各人のコンテクスト(文脈)に踏み入らない、自分の文化を相手に押し付けないという寛容性が、コミュニケーションルールの基本になっているということです。

ただ、この男性がハワイアンタイムを誇りに思って、ローカル以外にもスローライフを提案したいのだとしたら、やはりこの場面は「ビジー?」や「ビジネス?」ではその意図は伝わらないように思われます。

アメリカ合衆国の一州であるハワイ州が、日本以上に格差社会であることを考慮すれば、ローカルが多用する「ビジー?」「ビジネス?」という反語表現は、シニカルでもあり、自虐的でもあり、諦観の悲哀さえも感じてしまいます。

日本人観光客に「ここはハワイだ。気楽にやれ。」というハワイアンタイムを自慢したいのなら、ここは「ビジー?」「ビジネス?」の揶揄や嘲笑ではなく、オープンマインドなあいさつの言葉「アロハ」が適切なのではないでしょうか。

ご存知のとおり「アロハ」はハワイのローカル言語ですが、コミュニケーションルールを起動させるあいさつの言葉として広く世界中で知られています。

「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」などは、すべて「アロハ」という言葉で伝えることができます。

現在の日本社会には、たとえ単一民族の神話(癒しのナショナリズム)に寄り掛かったとしても、なお解決不能な個人間の価値観の多様化がいたるところに存在しています。

日本の社会は、すでに文化や宗教の比較不能な価値の迷路に入り込んでしまったかのようで、多文化共生社会前夜にあるかのように思われます。

さて、皆様は、この多文化共生社会にあって、「アロハ」と「ビジネス?」のどちらの表現方法が、コミュニケーションルールを起動させる言葉としてよりふさわしいとお考えになるでしょうか。

Aloha? or Business?

《おわり》
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by kokokara-message | 2016-04-23 10:00 | アロハ オア ビジネス?